お漬物のお話

お客様の中には数多くの料理店さんがありますが、景気低迷からだと思いますが漬物も金額の安い海外で製造された物などを選ばれるようになり、お取引のなくなるお店も多くなってきました。
お断りされるときの言葉は様々ですが、つけもの屋としては、「お前のところは高い」といわれるよりも、「漬物は添え物だから・・・」と言われる事の方が悲しいです。

今も昔も、漬物は添え物であって決して食事の主役になることはありません。
しかし、食事の最後に食べられる事の多い漬物やお茶は、その食事の印象の良し悪しを少なからず左右します。

長い経験から言えるのは、漬物を安いものに変えていったお店はその後閉店していってしまうことが多いという事です。
先日、以前お取引のあったお店がまた一軒なくなりました。

立派な店構えで、料理も美味しいのに、最後に出てきた漬物が安っぽい物だったり、自家製の一夜漬を作っていても塩が辛すぎるものや少々臭うものが平気で出てきたりするお店もけっこうあります。

作り手にとっては日常の「ケ」であっても、食べに来てくださるお客様にとっては特別な「ハレ」の日であるはずです。
駐車場にゴミが落ちていても、部屋の片隅の埃、テーブルのほんの少しの汚れでも、お客様の気持ちは台無しになるかもしれません。

お料理の代金に対してお漬物のコストは1~2%だとすると、そこまで削るようになるまでには、それ以前にもっと大きなコストの物もそういう意識で選んでいるのではないでしょうか。

お店の方はコストの削減を考える前に、お客様に気持ちよくお使いいただけるお店かどうかを考えてほしいと思う昨今です。

2012年 10月 04日 掲載

パソコンや携帯電話の漢字変換でお新香(おしんこ)は出ても、古香(こうこ)は出なくなってしまいました。
つけもの屋の私でさえ10年程前まで「漬物のことをこう呼ぶ事がある」程度に思っていたのですが、実はまったく違いました。

古香は、沢庵などのいわゆる保存食として日常に食べられていた漬物。
新香は、祝い事などのハレの日のお客様に出す為につくられた浅漬けの事を言ったのだそうです。

ハレの日に対する日常はケと言い、主食もハレ=白米、ケ=粟や稗などが入った雑穀米。
汁物も、日常のケは具沢山の味噌汁でハレの日は吸い物というように使い分けをしていたのだそうです。

四季折々の感性だけではなく、お客様を呼ぶ日をハレと言い、食事の中の漬物一つにまで心を配る日本人の心を忘れないようにしたいと思います。

ボタン一つで世界中に瞬時に文章や画像が送れるようになった現代でも、手書きの手紙やはがきを心を込めて書く時間を持つようにしたいものです。

2012年 2月 06日 掲載

先日、ラジオでレンコンについて放送していました。
レンコンの穴って何のために開いてるかって質問に、録音が流れた5人の内2人がカラシを詰める為って答えてました。

冗談はさておき正解は通気孔でした。
酸素の少ない泥の中で生きるレンコンは、その身(地下茎)が腐らないように空気を葉から取り入れて根まで送っているのだそうです。
青木は通気孔って事は知っていましたが、その流れるスピードは知りませんでした。
なんと秒速1センチの速さだそうです。
また品種によって孔の数が違うとの事でした。

我が家の八福神漬に使用しているのは、スーパーの
野菜売り場で売っている品種とは少し違います。
古い方ならご存知かもしれませんが、煮物にしたレンコンを噛むと糸を引いたりする古くからある品種のものです。
食感の粘りも最近のものとは違うように感じます。

農家さんのお話を伺っていたら、糸を引くと「腐っているのでは?」という問い合わせが出たりするので、糸を引かないレンコンが品種改良によってつくられ、それが主流になり、昔からの糸を引くレンコンは、今では種も売っていないとの事でした。
青木は、糸を引かないレンコンは茹で損ねた硬い芋のように感じるので糸を引くレンコンの方が好きです。

レンコン一つとっても、流行すたりや淘汰、というキーワードが付いてまわる時代です。
片田舎の小さな農家さんの「こんなレンコンでも無くなってしまうと思うと寂しい」 というお気持ちをこれからも大切にしていきたいと思う青木です。

2012年 1月 19日 掲載

食べ残した漬物を冷蔵庫に入れておいたのに翌日になると変な臭いがするなんて経験はありませんか?
これは酸化によるものなので、できるだけ空気に触れないようにすれば防げます。
白菜漬などの液に入っているものならば液の中に戻したり、深鉢などで漬け液ごと食卓に出すようにすれば開封後でも酸化を遅くすることができます。
一夜漬は殆どの場合発酵過程を経ていませんし、塩度も低いので風味の劣化や酸化も早いのです。

臭いが気になる程度なら、食べる前に水をくぐらせて固く絞って、醤油や鰹節をかけたりすれば美味しくいただけます。

我が家は酸味のある漬物でも、汁気を絞って野菜炒めや鍋に入れたりする事もあります。

2011年 12月 06日 掲載

今回は、食中毒の大まかな説明をしてみます。
大きく分けると2種類に分けられます。
一つは、細菌やウイルスなどの感染自体が原因となるもの。
もう一つはこの細菌の出す毒素が食中毒の原因となるものです。

前者の菌やウィルス自体が原因となるものは、大半は熱殺菌(煮る、焼く、茹でる等)で防ぐことはできますが、後者の場合は熱に対して強いものもあるので、特に注意が必要です。
中でもボツリヌス菌という細菌の出す毒素は、青酸カリの何十倍も強い毒素なので死者を出す危険性すらある事でしられています。

私どもの会社では、食中毒ばかりではなく、異物混入などの観点からも、作業者が素手で作業をすることのないように、またその作業の内容毎にゴム手袋を変えて作業にあたるようにしています。
たとえば、一夜漬用、キムチ用、沢庵用などといった形で作業者はその都度手袋を変えます。
これに加えて、毛髪混入防止の作業帽子、マスクなどをして作業しています。
以前テレビ取材で、坂東栄治さんがみえたときには、その格好をみて、中でサリンつくってんのか?って突っ込まれてしまいました。(笑)

40年前なら、樽から出した沢庵をそのまま商い、お客様は、それを洗って、切って食卓に上っていた漬物は、今では洗わずにそのままお召し上がりくださいという商品の方が多くなってまいりました。
漬物は保存食という概念はもはや過去のもので、次第に惣菜に近いものになりつつあります。

2007年 3月 10日 掲載

買ってきた漬物が冷蔵庫の中で未開封のまま賞味期限を過ぎてしまったなんて事ありませんか?
特に一夜漬けなどは賞味期限も短く、開封しても少人数のご家庭では食べきれずに捨ててしまったりって事があると聞いた事があります。

一夜漬けの賞味期限は概ね1週間程度の場合が多く、その賞味期限も未開封で冷蔵庫などで低温管理された状態での期間です。
一度商品の温度が上がってしまうと、それから冷蔵庫へいれても、期限内であっても、野菜の色があせてきたり、液が濁ってきたりします。
食べてみても、ちょっと酸っぱかったり…。

これは、発酵が進むにつれ素材の組織がアミノ酸に分解され酸味が増していくわけです。
更に発酵が進むと、舌がピリピリするほどの酸味がしてきますが、ここまでではない程度のものなら、まだ我が家は捨てません。

白菜や葉物の漬物であれば、液を軽く絞って野菜炒めや卵でとじて使ったり、細かく刻んでチャーハンの具にもなります。
白濁した液の中には発酵によって分解されたアミノ酸が豊富にあるので、調味料としても使います。
もちろん日持ちはしないので、余った液は捨ててますけどね。
あと、塩っ辛い漬物にはマヨネーズをつけて食べてみてください。
以外に合うんですよ。

2006年 12月 16日 掲載

学術的にはいろいろ詳しい説明はありますが、簡単にいうと、発酵とは微生物が生育した結果、人間に有益になる方向に変化する事を発酵と言い、有害な方向に変化する事を腐敗と言います。

日本では、酒、味噌、醤油、納豆、漬物とたくさんの発酵食品を食べていますが、世界的にもこれほど多品種の発酵食品を食べる民族は少ないのだそうです。

2006年 11月 16日 掲載